昆虫からのメッセージ

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人よりはるかに短い一生を終える昆虫たちは敏感に自然環境の変化を感じ取っています。昆虫たちが発する無言のメッセージに焦点をあてました。
 佐久市の昆虫体験学習館の昆虫インストラクター井出勝久さんは、わずか数十年の間に虫の生態が大きく変化したと感じています。
 例えばウスバカゲロウの仲間・キバネツノトンボやゴマシジミというチョウは佐久市内でもすっかり数が減ったり、見かけなくなりましたが、理由はわかっていません。
 その一方で、これまで見かけることがなかった昆虫が、信州で目撃されるようになりました。松本市・美ヶ原高原や佐久市・平尾山で生息が確認されたツマグロヒョウモンは元々、九州や西日本など比較的温暖な気候の地域に生息していました。ところが、最近その生息域が北へ北へと広がっています。地球温暖化が原因と考えられています。
 変化はそれだけではありません。これまでツマグロヒョウモンの幼虫が食べていたのは、スミレの葉でした。ところが、自生するスミレが減っため、生きるために別のエサを食べるようになったのです。それは寒い場所でも育つスミレ科の植物・パンジーです。
 環境が変化で姿を消しつつある虫がいる一方で、反対にその変化に順応して生き延びようとする虫もいます。昆虫の世界で起きている小さな異変、それは私たちに対する無言の警鐘なのかもしれません。

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