見納め (楠原)
「そろそろゆうこのひな人形、見納めかな~」
と母から連絡が来ました。
そうか、もうそんな季節です。
私のお雛様は、男雛と女雛の2人だけ。
子どもの頃、お雛様の段の数が、ちょっとしたステータスのように感じて、
お友達のお家に遊びに行って、立派な7段飾りが現れるとちょっと悔しい気持ちに
なったこともありました。
「うちは転勤族で引っ越しが多いから、
コンパクトなのよ」という母の言い分に、しぶしぶ納得したことも。
大人になると、あまり気にすることもなく、
いつ出して、いつしまったのかすら、気づかないくらい。
それでも、毎年「お雛様出したよ」という連絡だけはもらっていました。
数年前、久しぶりにお雛様を見たら、
こんなに小さかったけ?と思うくらい、慎ましく、
少し傷んだ姿に30余年の月日を感じました。
それでも、品のある顔立ち。
この優しい表情は、子どもの頃から自慢です。
お役目を終えたお雛様。今年で見納め。
「お雛様出したよ」の連絡が、こんなにも温かいものだったことに
今更ながら気づきました。
来年からどうするのよ…
寂しさ紛らわすため、かわいい和菓子を連れて帰りました。
上品な甘さが口に広がる間、切ない気持ちが少しぼんやりしました。
面倒も見なかったくせに、いざさよなら…となると、判然としない気持ち。
自分勝手ながら、母が悪魔に見えてくる~~~
お雛様の寂しさを、お雛様食べて埋めてるわたしも、大概悪魔です。
ちゃんと供養をして、母と一緒に見送ります🌸