
天龍村の中井侍地区で銘茶と呼ばれる茶葉が栽培されています。その名も中井侍銘茶。一番茶のみ手摘みする希少価値の高いお茶です。今回は中井侍銘茶を深掘りします。
中井侍銘茶は標高600メートルの急峻な斜面で天竜川から立ち上る川霧を浴びながら育ちます。栽培農家は11軒。原田浜子さんのお宅では収穫時期ともなると親せきや知り合いが集まり茶葉を手摘みします。中井侍銘茶は1971年に静岡県の「やぶきた茶」を移植したのが始まりで、強い甘みが特徴。以前からあった在来種も銘茶として人気です。
収穫した茶葉は地区の製茶工場に運び入れ、その日のうちに「浅蒸し」という独自の方法で製茶します。収穫期ならではの味がもう一つあります。「一番茶の天ぷら」です。地元農家では、その生の茶葉を天ぷらにすることもしばしばで、茶葉の甘い味わいが面白く、飲むお茶とも相性抜群です。

浜子さんの実の姉、百合子さんが歌うのは伝承の「中井侍茶摘み唄」。天竜川を望む谷間にこだまします。中井侍の茶摘みは親せきや知人の手伝いが欠かせませんが、栽培農家は他の農家の茶摘みも手伝います。共に助け合いながら急峻な茶畑にしがみついて茶摘みを続けます。