個人経営の店が減る一方で、一世紀過ぎても尚、常連客で賑わう個人商店があります。その店独自の商いとは何か、今回、客を惹きつける秘密に迫ります。
長野市の県町通りは、いわば官公庁通り。ここに理髪店、“大盛軒(たいせいけん)”があります。三代目店主の小林成亘さん、妻の千恵子さん、四代目の小林亘さんが笑顔で出迎えてくれます。大正2(1913)年創業。今年で107年を数えます。場所柄、代々の知事や市長も常連客だった時代もあり、四世代にかけて通うファンもいます。耳穴剃りのサービスも創業時から。理髪はもちろんですが、ここでの会話目当ての常連客がほとんどです。
東御市の安楽屋別府総本店は、明治元(1868)年の創業。地元住民から絶大な支持を得る小売店です。100円の野菜コロッケは一日約600個を揚げ、安価な自家製の惣菜や生鮮食品は、夕方になるとさらに半額になります。近くの旅館などから仕出し弁当の注文も受けます。七代目店主の阿部卓朗さんは「お客との距離が大事」と言います。自宅から3キロの道のりを歩いて通う80代の女性は、この場所がお気に入りです。