abn 長野朝日放送

当時の開智学校は文明開化の波が押し寄せる中、明治6年に始まり、明治9年に現在の校舎が建てられました。独創性豊かな和洋折衷を実現し、校舎としての機能性を兼ね備えている点が主な指定理由です。近代学校建築として初めての国宝指定になりました。地元出身の大工棟梁・立石清重は、開智学校建築にあたり、開成学校（現東京大学）や大蔵省などを参考にしました。そして、建築費の7割を地元住民が負担したというのは驚きです。

なぜ地元住民が負担したのでしょう。実は、彼らの教育への理解があったからです。旧開智学校のある松本市は、かつての筑摩県です。明治8年の旧筑摩県の就学率は約72％で全国1位（文部省年報）。開智学校は「教育県・信州」の礎になったと言っても過言ではありません。旧長野県の就学率は約55％（長野県教育史）でした（全国平均35％）。江戸時代の信濃国の寺子屋数は全国一で、もともと教育熱心な土地柄とも言えます。

当初、旧開智学校は、女鳥羽川沿いの全久院というお寺の跡地に建てられました。昭和39年、本館校舎のみが、現在の場所に移築、保管されています。女鳥羽川沿いにあった当時の校舎に通った卒業生に出会い、高楼（八角の塔）に上り、教師に怒られたエピソードなども伺います。