
小さな大観光地 小布施町
信州でいちばん面積が小さな市町村である小布施町(19.12K㎡)。人口は1万719人(2016年6月1日時点)。しかしココは、毎年、人口の100倍ほどの観光客が訪れる北信濃有数の観光地でもあります。名物の栗菓子や果物が出揃う秋は特に活況。葛飾北斎をはじめとする著名人ゆかりの記念館や点在する史跡の類も人気のヒミツ…なのですが、なんといっても人々を惹きつけているのは、“町そのものの佇まい”。そして、この町が“観光立地ではないこと”にあるんです。
小布施町がもっとも賑やかなのは、「北斎館」を中心に土産店や飲食店が建ち並ぶ大通り界隈の限られたエリア。町の面白さを象徴するのは、建物の隙間を縫うように、幾つもの小径が整備されていることです。家々の軒下を繋ぐ裏道は、観光客目線では入り込むのをためらってしまうような“生活道路”の風情…なのですが、ココは誰もが自由に行き来することが出来るし、案内板もあちこちに。歩いてみると他の観光地では出会えない景色、通りに面していない住民の日常や生活感が漂う景色をみつけることが出来るのです。さらには、住民が自宅の庭を「オープンガーデン」として開放していて、手入れされた花壇を眺めながら行き交う人と言葉が交わされる…といった光景も広がっています。
小布施町は、江戸時代から交通の要衝であり、商いが盛んな土地柄でもありましたが、観光のために人が集まるようになったのは、ここ30~40年くらいのこと。きっかけは1980年代に町並みを「修景」したことでした。
「修景」とは「古くからあるものを使いながら、足りないものを補うまちづくり」。景観を整える目的は、あくまで住民の生活機能を高めるところにあります。娯楽施設はないし、大きな看板やネオンもない。古いものを壊し、最先端の町並みを作ろうという考えは、小布施の人々にはありません。入り組んだ裏道と自然な景観、観光と生活空間の境目の曖昧さ…。それこそが、町歩きに特別な楽しみを与えてくれるし、小布施町が“作られた観光地ではないこと”を感じさせてくれる部分なのかも。修景の精神は、現在も住民の中に生き続けていて、小径が増えていったり整備されたり…小布施町は「常に工事中」なのです。

小布施町には“歩く楽しみ”がある。人々がこの町を何度も訪れたくなる“町並み”“雰囲気”“少しの特別感”に触れてみたくて、平沢アナウンサーが小布施町の散策に出掛けます。