楠原由祐子ブログ

300年後の未来の子どもたちへ

私がabnに入社した6年前の4月、東日本大震災と県北部地震が発生した直後でした。

その時、初めての取材で訪れたのが、栄村です。

以来、特番やニュースの取材に加え、プライベートにわたってもお世話になっている小滝地区。

13軒約30人が暮らす小さな集落です。

美しい里山は新緑の6月を迎えました。

東京の子どもたちが田植え体験にやってきました。

車で3時間半。高層ビルは一つもありません。

聞こえるのは、鳥のさえずりと、水のせせらぎ。

田んぼにはおたまじゃくしがたくさんいて、夜にはカエルの大合唱も!

泥まみれになって、秋の実りを想像しながら、2時間かけて、一つ一つ丁寧に苗を植えました。

泥の中が意外と暖かいこと、農家さんは雨の中だって田植えをすること、子どもたちにとっては、すべてが教材です。

里山には、テキストでは学べない知恵がたくさん詰まっています。

ご飯はお仕事の対価としていただけることも、身を持って体験。

いつもよりおいしく感じるかな?

集落のお母さんが用意してくれた、おにぎりとタケノコ汁、

それに、田植えごっつぉ=田植えが終わった時にいただくごちそう、煮物も!

こんなににぎやかで明るい集落ですが、震災の時は、家も田んぼも大きな被害を受けました。

そんな時に、住民が知った、集落の歴史があります。

今から346年前に水不足で小滝集落が存続の危機に陥ったことがあります。

小滝集落は、ほかの集落より下流にあるため、水の問題は深刻でした。

そこで先人は飯山藩の公共工事で「小滝堰(こたきせき)」、つまり水路を引くことに成功したのです。

その用水路は、今も大切に守られ、生活用水としても役割を果たしています。

この水が、およそ300年にわたって田を潤し、良質な米を育てています。

震災という困難を乗り越え、これから未来の300年後に集落を残す。

小滝の意地と決意を感じる清らかな沢です。