abn 信州がんプロジェクト ~知ろう、考えよう、がんのこと~

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Q&A 教えて!がんのこと

乳がん検診は、エコーとマンモグラフィーのどちらを受ければいいですか?

長野医療生活協同組合 長野中央病院 外科
外科部長 成田 淳 さん

2018.03.01 掲載

  1. 各々の検査の得意分野

    超音波検査(エコー)とマンモグラフィーには各々に得意分野があります。例えば、微小である石灰化の検出に強いのがマンモグラフィー、1cm以下の小腫瘤の検出に強いのが超音波検査です。
    一般に、若いころは乳腺が豊富ですが、年齢を重ねるにつれて乳腺は次第に退縮して脂肪が増加していきます。マンモグラフィーでは黒く写る脂肪を背景に乳腺が白く描出されるため、脂肪への置換が多い厚い乳房では乳腺の所見が得やすいと考えられます。しかしマンモグラフィーにも、苦手な状況があります。乳腺が多い乳房です。乳腺が多いと乳房全体が白い背景になるため、白く写る乳腺内に発生した腫瘍の陰影や細かな石灰化が見えにくいのです。〝雪原の白うさぎ〟というわけです。
    超音波検査は〝音波〟を利用して乳腺の断面像をつくり、白色の帯状の乳腺組織内に存在する腫瘤などを主に黒色(低エコー)の物体として描出することができる検査です。5mmほどの小さな腫瘤の描出も可能です。赤ちゃんをみることができるほどの、からだにとてもやさしい検査です。

  2. 個人ごとの乳腺の違い

    年齢による乳腺の退縮と脂肪への置換を考慮すると、一般には、エコー検査は若年者に有効であり、マンモグラフィーは熟年者(特に高齢者)に有効であるといわれています。しかし実際には各個人の違いがかなり大きいと考えられます。これは体格(乳房の大きさなど)と乳腺の量の違い(元来の乳腺の量と、年令による脂肪への置換の度合い)です。もともとの乳腺の量が多い方も大勢いらっしゃいます。
    最近〝高濃度乳房〟という言葉をテレビなどで耳にすることがあります。これは病気の名前などではなく、その方の乳腺組織と脂肪組織の度合いを表す言葉です。マンモグラフィーの検査を行う際の診断のしやすさ・しにくさを判断する要素の一つです。

  3. まず検診をうけること&ご自身の乳腺の情報を得ること

    まずどちらかの検査で検診を行いましょう。現在、視触診のみの検診は行われていません。初めて乳がん検診を受けるのであれば、40歳以上の方にはマンモグラフィー、30歳代の方にはエコー検査をお勧めします。しかし2つの検査には、前述のとおり各々に得意な分野があります。どちらか一方の検査のみを継続した場合には、初期の乳がんの所見が得にくいこともあると考えられるわけです。また、繰り返しになりますが乳腺の様子には個人差があります。したがって、ご自身の乳腺に関する情報を得、ご自身の乳腺の状況を知り、ご自身にとっての有効な検診を考えることが大切です。
    乳がんの死亡率を減らすために行われる対策型検診は、近いうちに総合判定を推奨することになるのではないかと考えられます。総合判定とは、マンモグラフィーとエコー検査の組み合わせです。マンモグラフィーの情報を踏まえてエコー検査を行い、検診の精度と効果をさらに向上させようという考え方です。
    女性のがん罹患率第1位である乳がん。乳がんに対する対策はやはり早期発見・早期治療です。行政主導で実施されている対策型検診への参加と共に、病院や診療所などの医療機関で行われる人間ドックなどをはじめとした各々の方の意思で行う任意型検診も積極的に受けましょう。