長野赤十字病院 薬剤部
緩和薬物療法認定薬剤師 田幸 稔 さん
2018.01.03 掲載
医療用麻薬は怖い薬ではありません
医療用麻薬はがんの激しい痛みに使用される痛み止めです。麻薬と聞くと不安に思う方もいらっしゃるでしょうが、がんの痛みのある人に医師が適切に使用する‘医療用の麻薬’は、安全で効果的です。WHO(世界保健機構=国際連合の健康に対する専門機関)も使用を推薦しており、世界中で使用している代表的な医薬品です。
がんの痛み止めとして使用する場合、中毒になる、依存症になる、死期を早めてしまう、ということはありませんので、安心して使用してください。
なお、他人に譲ることは法律で禁止されていますので、絶対にしないでください。
がんの痛みは我慢しないで「痛い」と伝えてください
がんの痛みは我慢していると神経が敏感になり、より多くの痛み止めが必要になります。また、生活する気力やがんそのものの治療への意欲がなくなることさえあるので、なるべく早いうちに痛みの治療を行う必要があります。
痛みの治療は「WHO方式がん疼痛治療法」で多くの患者さんの痛みを取り除くことができます。また痛みは患者さん本人しか感じられませんので、どんな名医でも正確に把握できません。痛いときには必ず痛いと伝えてください。
医療用麻薬の種類は?
一日中効果が持続的に続くように時間を決めて使用する、徐放薬。
突然痛みが強くなったときにだけ使用する、速放薬(=レスキュー薬)。
この2種類を組み合わせて痛みを取り除きます。
一日中痛いのか、突然痛くなるのか、医療者に教えてください。
医療用麻薬の副作用は?
出やすい副作用として、便秘・吐き気・眠気がありますが、それぞれ予防対策があります。
便秘対策としては、水分・食物繊維の摂取、便秘薬の使用。
吐き気対策としては、吐き気止め薬の使用。
眠気対策としては、2日程で体が慣れて眠気がなくなるまで、運転など機械操作や転倒に注意して過ごします。
いずれの副作用も出現時には我慢せずに教えてください。
がんの痛みからの解放がもたらすものは
痛みを忘れての、睡眠・旅行や外出・趣味や家事など、大切なのは「患者さんが痛みを忘れて安心して過ごせる」ということです。がんの痛みはとることができます。私たち医療者に気兼ねなく相談してください。