abn 信州がんプロジェクト ~知ろう、考えよう、がんのこと~

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Q&A 教えて!がんのこと

がんは遺伝するの?

諏訪赤十字病院 腫瘍内科部長 / 通院治療センター長
進士 明宏 さん

2017.11.01 掲載

遺伝につきましては、誤解により偏見などがあってはいけませんので、少し説明が長くなりますが下記に回答します。
まず、『現在、日本人は生涯で2人に1人はがんになる』ということを聞いたことがあると思います。日本人は『がん』をタブー視してきたと思いますが、これだけありふれた病気ですので、よくある病気の中のひとつとしてとらえてほしいと思います。
次に、『がん』は遺伝子の変化によっておきる病気であることがわかってきています。従って、『がん』は『遺伝子病』ということができます。ここで、『遺伝子病』だから『遺伝する』ものと早合点しないでください。この遺伝子の変化の大部分は、生まれてから年齢を重ねて後天的に生じたものの積み重ねによって生じます。従って、『がん』は遺伝子の病気といえますが、大部分は親から子へ遺伝(継承)されません。

一方で、特定の部位の『がん』を持っている人がたくさんいる家系があります。こうしたことを家族集積性といいます。家族集積性を示す『がん』の頻度は、5%程度あると想定され、ほとんどすべてのがん種でみられます。家族集積性を示す『がん』を、家族性腫瘍と呼びますが、遺伝子が原因のものと、環境などの要因によるものとがあります。家族性腫瘍の多くは、原因となる遺伝子の異常が精子もしくは卵子を経由して継承(遺伝)され、受精卵の時点から存在しているため、遺伝性腫瘍といわれます。遺伝性腫瘍を疑う特徴として、①家族内集積性があること②若年発症すること③複数の臓器の『がん』が見つかること④左右二つある臓器では両側にがんが見つかること(例:肺がん、乳がん)が挙げられます。こうした特別な場合に限っては、『がんは遺伝する』ということが言えます。

遺伝性腫瘍と診断された場合、確かに心配な気持ちになると思います。しかし、それぞれどの臓器の『がん』が、何歳ぐらいから、どのくらいの確率で起こるのか予測することが可能で、それに合わせて定期的な医療機関の受診や検査で早期発見、早期治療をすることができるという利点があります。