長野赤十字病院
腫瘍内科部副部長 上野 真由美さん
放射線治療科部長 佐々木 茂さん
2017.07.01 掲載
がんの三大治療は「手術(外科治療)」「薬物療法(化学療法)」「放射線治療」です。このうち、化学療法と放射線治療の副作用について説明します。
化学療法の副作用について(腫瘍内科部副部長 上野 真由美)
抗がん剤は、がん細胞が増殖したり、生き続けたりするのに必要なメカニズムを抑えることで、その効果を発揮します。しかし、抗がん剤が抑えるメカニズムの多くが、正常の細胞(造血細胞や口腔、消化管粘膜など)が生きるのに必要なメカニズムと共通しているため、正常の細胞もダメージを受けます。
これによって起きるのが副作用です。副作用の程度や種類は使用する抗がん剤によりいろいろですが、吐き気止めなどの薬や、適切な対応策により、コントロールできることも多いので遠慮なく主治医にご相談ください。
代表的な副作用について解説します。
副作用の種類によって症状が出現する時期も異なりますので、下記の図をご参照ください。
そのほか、便秘、しびれ、味覚障害、下痢などの副作用が出現します。
これらの副作用が、日常生活に著しく支障を来す場合には、抗がん剤の減量、中止を検討する場合もあります。
最近増えてきている分子標的薬は腫瘍が増えるメカニズムや腫瘍の表面の目印に選択的に働く薬です。吐き気や骨髄抑制などが少ない反面、抑えるメカニズムに対応した特徴的な副作用が現れます。皮膚障害を起こすものが多く、長く治療を続けるためには患者さんの日常のスキンケアが大切です。
免疫チェックポイント薬はがん細胞に対する自分の免疫を高める薬で、今後使用できるがんの種類が広がるだろうと予測されます。自分の体に対する免疫(自己免疫)を引き起こしてしまう場合があり、間質性肺炎や糖尿病、甲状腺疾患、神経疾患などの副作用が起きることがありますので、気になる症状があれば主治医に伝えるようにしましょう。
化学療法が有効であるにもかかわらず、副作用のため中止になることは残念なことです。自分にあった化学療法をより長く、快適に続けるためには、副作用について理解し、主治医、薬剤師、看護師と相談しながら症状をうまくコントロールしながらつきあっていくことが大切です。
放射線治療の副作用について(放射線治療科部長 佐々木 茂)
放射線治療はエックス線や電子線、陽子線、重粒子線などの放射線を病気に集中して照射することで、がんを治したり再発を防いだり症状を緩和したりする治療です。放射線治療の技術が向上してきた現在では以前と比べると副作用はかなり少なくなっています。多くの場合は通院で治療ができますが、病気や全身の状態によっては副作用が出る場合や入院治療になる場合があります。
放射線治療の副作用は基本的には治療を行っている部位に出る可能性があります。放射線を照射する場所に炎症や臓器の機能低下が起こるために症状が出てくることがありますが、かならず起こるわけではありません。また副作用が出たとしても症状は放射線治療が終了すれば自然に改善していき、症状が残ることはほとんどありません。体のそれぞれの場所に治療を行ったときの具体的な副作用は以下のようなものです。
頭部:頭重感、頭痛、目の乾燥(涙の減少)、脱毛
頸部:口やのどの炎症、口の乾燥(唾液の減少)、皮膚の炎症(発赤、かゆみ)
胸部:食道の炎症(胸やけ、食事のつかえ感)、肺炎(咳、熱)
腹部:胃炎、腸の炎症(下痢、腹痛)
骨盤:膀胱炎(頻尿、排尿痛)、直腸の炎症(排便痛)
四肢:皮膚の炎症、むくみ など
全身への影響:だるさ、食欲低下
病気の種類や状態、ほかの治療の併用などにより予想される副作用や症状の程度は異なりますので治療前に主治医から詳しく説明を受けてください。
治療が始まりましたら副作用が出にくいようにするための予防が大切です。放射線が当たる場所は皮膚の炎症が出る可能性がありますので強くこすらないようにしてください。また飲酒や喫煙は様々な副作用を強くする可能性が高いため治療期間中は控えてください。
症状が出た場合には対症療法を行うことで症状を緩和して治療を継続できるようにします。治療期間中に変わったことや困ったことが出てきましたら我慢せずに主治医に相談してください。