ネイチャー&ヒューマンスペシャルシリース13『青い森を継ぐ家族』

ネイチャー&ヒューマンスペシャルシリース13『青い森を継ぐ家族』

番組制作の舞台ウラ

取材する村井ディレクター(手前)・番組制作の舞台ウラ

取材する村井ディレクター(手前)

信州の大自然(ネイチャー)とそこに暮らす人々(ヒューマン)の営みを紹介するシリーズ。年に1度放送をしていて今回が10回目です。舞台は志賀高原とその麓にある地獄谷。どちらも山ノ内町の世界的な観光スポットです。余談ですが、山ノ内町には私の妻の実家があります。結婚の挨拶に行った帰りに2人で訪れたのが地獄谷野猿公苑でした。温泉に入る野生のサルたちの姿と山奥に集まる外国人観光客の多さに衝撃を受けたことをはっきりと覚えています。そんな縁もあり、非常に思い入れの深い場所です。

取材がスタートしたのは一昨年の12月。撮影に臨む前に決めていたことがあります。「1年でサルたちの顔を識別できるようになろう」と。野猿公苑にいる約160匹。同じように見えても、それぞれにルーツがあってストーリーがあるはず。まずは彼らのことを知ろうと思いました。苑内のサルほぼ全てを識別している副苑長の滝沢厚さん(39)に見分けるコツを教えてもらいました。顔つきには性格やその時の立場が現れるといいます。強いものは凛々しく風格があり、弱いものは柔和な表情に。そして、じっくり観察してみると、所々に傷やあざのようなものが見受けられます。毛の色や生え方もそれぞれ違います。滝沢さんは、様々な特徴から総合的に判断しているそうです。

しかし、それらを踏まえても全てのサルを完璧に見分けることはあまりにも難しかったため、何匹かに照準を絞りました。カメラマン、音声スタッフに顔写真付きのプロフィールを配り、クルー全員で顔と名前を覚えることにしました。取材が進むにつれ、少しずつ違いが分かるように。餌の時間になると真っ先に職員の横に来るリーダー格のサル。好奇心旺盛で取材用の機材に興味を持つサル。カメラを向けると必ず後ろを向いてしまう恥ずかしがり屋のサル。人間と同じように彼らにも個性があるのです。

春になると、取材で追っていたメスザルのひ孫が生まれました。愛着が湧き、取材中にも関わらず時間を忘れて眺めていました。親から子へ、子から孫へ。見た目だけではなく、仕草や習慣なども伝わっていくそうです。野猿公苑に長く通うと、その系譜を見ることができます。冬、露天風呂に入る姿だけではなく、視点を変えると楽しみ方は様々。

番組では、地獄谷の厳しい自然の中でたくましく生きる野生のサル。そして、その姿に励まされながら奮闘する一軒宿の女将の1年を描きました。4Kカメラで撮影した地獄谷、志賀高原の美しい四季とともに、サルたちの表情にも注目してもらえればと思います。

長野朝日放送
番組ディレクター 村井洋太郎