マツタケの魅力とは一体何なのか。54年生きてきたが未だにわからずにいる。香りがいいことはわかる。独特な旨味があることもわかる。庶民が口にするには少しばかり高価なことも知っている。価値があるから旨いと思うのか、旨いからこそ価値があるのか。マツタケとは、奥ゆかしく奥深い食べ物だと思う。
マツタケにまつわる話として、わかっていたこともあった。他のきのこ類とは違い「栽培できない」ということだ。でも今回取材した「山といきる84歳」の取り組みを見て、話を聞き、考えを改めることになった。きちんと整備し「山を育てる」ことでマツタケが生える環境を作ることができると言うではないか。私には「栽培」にしか見えなかった。
ただそれも、長い年月をかけ、根気のいる作業を諦めずに続けた結果。と言うこともよくわかった。
印象に残ったのは、育ち始めた小さな樹木を見てつぶやいた「この木にマツタケができるのは、子の代か孫の代か…」という言葉。未来を見据えて、今動くことがどれほど大切か。私たちにそう語りかけている感じがした。