abn 長野朝日放送

サラリーマンにとって人事異動は最大の関心事。未経験の職場へ、というのも当たり前です。まもなく胸躍る？そんな季節がやって来ます。でも、まさか旅館の女将さんが、社内人事で決まったなんて！明治から続く老舗旅館の本当の出来事です。

全国第二位の温泉数を誇る長野県。御神渡りへの期待が高まる諏訪湖畔を歩くと寒さが厳しく、温かい温泉にざぶんと浸かりたい気分になります。

江戸時代に中仙道で唯一温泉があった由緒正しき宿場町の下諏訪温泉に、昨年11月にリニューアルオープンした宿があります。そこで女将になったのが、グループ企業の若手社員。旅館の再興を託されました。

つまり人事発令。血縁ではなく26歳の若さでの大抜擢でした。それまでレストランで接客の腕を磨いてきても女将業は未経験。年末年始の大事な時期を前に新米女将は、てんてこ舞い。

高校時代、バレーボールのリベロで慣らした体力を武器に小さい体で旅館の中を走り回ります。ヤル気満々でしたが、研修もなく、実践で鍛えられていきます。時にはベテラン女将に掃除の仕方を厳しく注意されることも。人知れず涙をこぼした日もありました。　

しかし年末年始が過ぎて、着せられていたような着物姿も板につき、わずか3ヵ月でみるみる女将らしくなりました。歴史ある温泉地をもっと元気にしたい、その伝統を守り抜き、さらに新しい魅力を生み出したいと、温泉旅館だけでなく青年部も様々な努力をしています。ベテラン女将達も新米女将に期待しています。細い腕にずっしりかかるプレッシャー。それでも「この町で一番の旅館、そして女将になります」と、誓ってくれたことを忘れません。

大の温泉好きのラッシャー板前さんは小諸市高峰温泉の、雲上の一軒宿を守り続ける親子に密着。標高2000ｍの雪原の露天風呂は、スゴイの一言です。湯けむりの向こうで情熱を燃やす信州人をご覧になったあとは、どうぞゆっくり温泉を堪能して下さいませ。