おぉ!信州人

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おぉ!信州人取材記

悩みの種は、後継者問題

「長男たるもの家を守るのだ!」。そんな風潮のなか、長男の私は20年以上前、故郷を離れて信州にやって来ました。ですから、家業を継ぐために奮闘している若者を、もう無条件で尊敬します。一度都会に出て故郷に戻ってきたとなれば、なおさら全身全霊で応援してしまいます。

20131029今回はパン特集。お邪魔したのは松本市の老舗「パンセ小松」です。100種類以上のパンのうち、シンボルである牛乳パンは大量のクリームが程よく甘く実にうまい。午前中で売り切れご免の人気商品です。

この店の悩みの種は、後継者問題でした。

4代目の小松治夫さん(63)は静岡の大学に進み、卒業後、迷わずパン屋を継ぎました。すてきな奥様も静岡から連れてきました。40年がたちました。

「さあ、これからどうする」。跡継ぎ問題に頭を抱えていたところ、東京で10年近く働いていた長男の宏充さん(35)が戻って来ました。息子が半年以上悩み続けて出した結論に、両親は大喜びしました。

修行中の宏充さんが食パン作りの最終工程に初めて挑む瞬間に立ち会いました。ぐずぐずしていると焼き過ぎる重要な仕事です。流れるような治夫さんの仕事ぶりとは違い、5代目は、まぁたどたどしかった。4代目が付けた点数は20点。「厳しい!」。でも息子を見守る治夫さんの目は優しかったです。

パン屋の朝は午前4時前に始まります。厨房(ちゅう・ぼう)はてんてこ舞い。夏場は50度以上になるそうです。芳しく甘い香りの裏には、大変な努力や苦労があります。

ラッシャー板前さんも長野市と小布施町のパン屋さんの人情に触れました。

近くにおいしいパン屋さんがあると、それだけで人生が豊かになったような気がしませんか。パンの生地やクリ―ム、そして総菜には、お店の愛情がたっぷり入っています。ほーら、焼き立てパンのいい香りがしてきましたよぉ。(abnアナウンサー 松坂彰久)