おぉ!信州人

おぉ!信州人

おぉ!信州人取材記

亭主元気で留守がいい

旅の中盤はベトナム中部のフエを中心に信州人探しを展開しました。フエはベトナム最後の王朝の都だった街で、いにしえの建築群が世界遺産に登録されています。
ハノイからの列車でフエ駅に降り立った我々は、そこでホテル従業員のティンさん(27歳)と出会いました。強引な客引きは疑ってかかる我々ですが、10時間を超える移動で思考能力がゼロ。ホテルは見てから決めればいいとティンさんの車に乗り込みました。紹介されたのはセミダブルを置いても余裕の、実に広々としたシングルルーム。これがたったの15ドル。18ドルだったハノイの安宿とは雲泥の差です。私なら即決ですが、番組予算を預かるディレクター山口は、毎日ビール1本と自転車無料貸し出しをオプションで認めさせて、いかにも渋々といった感じで交渉を成立させました。まさに鬼です。まぁ、自転車はいつも「貸し出し中」、ビールが出たのも初日だけでしたが…。しかし、ティンさんとの出会いが取材をする上で大きな助けになりました。

column02_240x180旧正月(テト)で里帰りするはずだったティンさんに無理やり頼み込んで、現地コーディネーターとして強引に採用。ホテルの車で快適な取材を敢行できたのです。フエからダナンに至るまでの国道1号線を南下。途中、農村や漁師町で地元の大家族や子供たちとも知り合いました。何より、車中でのティンさんとの会話が楽しかった。彼は大学を卒業したものの、コネ社会のベトナムでは就職は難しく、独学で日本語を勉強してガイドの試験を目指しているということ。16ヶ月の男の子の父親で「できちゃった婚」だということ。奥さんの尻に敷かれているということ。「だから頑張るね」「ティンさん、日本では『亭主元気で留守がいい』と言うよ」「…」