雨の季節。
一雨 慈雨 山雨 小雨 大雨 微雨 煙雨 霧雨 糠雨 本降 大降 本ぶり ざあざあ降 土砂降 土砂ぶり どか雨 篠突く雨 篠つく雨 暴風雨 豪雨 雷雨 俄か雨 俄雨 通り雨 村雨 スコール 日照り雨 日照雨 天気雨 長雨 霖雨 村時雨 酸性雨 甘雨 喜雨など。
こんな雨もありました。「遣らずの雨」――愛しき人を引き留めるかのよう、降る雨に人の心が託されます。留客雨、とも言いました。なんとも色っぽい。
寅さん・渥美清主演のドラマに「泣いてたまるか」がありました。
空が泣いたら 雨になる
山が泣くときゃ 水が出る
俺が泣いても なんにも出ない
意地が涙を 泣いて泣いて泣いてたまるかよ 夢がある
北原白秋作詞「雨(あめ)」は、
雨がふります 雨がふる
遊びにゆきたし 傘はなし
紅緒(べにお)の木履(かっこ)も
緒(お)が切れた
木履は「下駄」のこと。紅緒は下駄の赤い紐でしょう、鼻緒の紐が切れてしまったのです。二番以降の歌詞も雨に降り込められ、持てあます子供らの嘆きを綿々と綴ります。
童謡「あめふり(あめあめふれふれ)」、これも北原白秋の作詞で、
あめあめ ふれふれ かあさんが
じゃのめで おむかい(お迎え) うれしいな
ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン
三番の歌詞に、
あらあら あのこは ずぶぬれだ
やなぎの ねかたで ないている
柳の「ねかた」、根本で泣いている子はお母さんのお迎えがなかったのでしょう。柳は多分、しだれ柳。英語で「 ウィーピング・ウィロー(weeping willow)」、その垂れ下がった姿から「泣き柳」と呼ばれます。
【石井秀一】
(日刊スポーツ I / 2022年6月)
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