新聞に乗らない内緒話

新聞に乗らない内緒話

コラム

明日への、言葉たち

 高校生までは読書など無縁だった。大学生になって突然読み始めた。どういうきっかけであったか記憶にないが、新聞記者という職業を意識したからであろうか。「無知の知」を自覚したせいかもしれない。
 以来、本の中から浮かび上がる「言葉」を集め始めた。かつてはノートに写し取ってきたが、最近ではパソコンに保存している。いくらでも書き込め、気軽に閲覧できるから重宝している。膨大な量になった。
 ふと何かに迷った時、自分を勇気づけてくれる言葉を探してパソコンを開く。新型ウイルス禍の最中、。心に引っ掛かった言葉を拾ってみる。
 ほんの一部で、脈絡はない。

★いずれにしろ、スポーツというものは、思想の一種なのだ、と思うし、言葉よりも強い思想である。
一方、政治より弱い思想なのだ。オリンピックで戦争を回避できなかったし、戦争はオリンピックを潰した。

(出久根達郎「オリンピックと二人の作家」)

★「たとえ先行き不透明であろうと、人物払底であろうと、われわれは、民意を汲むことにつとめ、無力な人を虐げたりしない、われわれより少し賢い政府、指導者の舵取りで暮らしたいものである」

(藤沢周平)

★司馬 もう、だいたいこれで終わりなんでしょう。日本のいわゆる発展は終わりで、あとはよき停滞、美しき停滞をできるかどうか。これを民族の能力をかけてやらなければいけないんです。
井上 美しき停滞…、それはいい言葉ですね

(新装版「国家・宗教・日本人」司馬遼太郎 井上ひさし)

★(笑顔とは)元手がいらない。しかも、利益は莫大(ばくだい)。
与えても減らず、与えられたものは豊かになる。一瞬のあいだ見せれば、その記憶は永久につづく。
どんな金持ちもこれなしでは暮らせない。どんな貧乏人もこれによって豊かになる。
家庭に幸福を商売に善意をもたらす。
友情の合言葉。
疲れたものにとっては休養、失意の人にとっては光明、
悲しむものにとっては太陽、悩めるものにとっては自然の解毒剤となる。
買うことも、強要することも、借りることも、盗むこともできない。
無償で与えてはじめて値打ちが出る。

(デール・カーネギー「人を動かす」)

(日刊スポーツ I / 2020年7月)

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