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こんな険悪なムードを憂慮、米国から選手団に随行したペンシルベニア大司教エチュルバート・タルボットは自国選手たちに対し、こう強く諭した。
「オリンピックにおいて重要なのは勝利することよりむしろ参加したことであろう」。
クーベルタンはその言葉を聞きつけ、5日後に大会役員が集まるレセプションで以下のようにスピーチしている。
「ペンシルベニアの司教が述べられたのは、まことに至言である。人生において重要なことは、成功することではなく、努力することである。根本的なことは征服したかどうかにあるのではなく、よく闘ったかどうかにある。このような教えを広めることによって、いっそう強固な、いっそう激しい、しかもより慎重にして、より寛大な人間性を作り上げることができる」(「名言の正体 大人のやり直し偉人伝」山口智司著・学研新書)
クーベルタンが強調したかったのは「征服したかどうかにあるのではなく、よく闘ったかどうか」の部分であったはずだが、人々の記憶に残ったのは司教の、冒頭の「オリンピックにおいて重要なのは勝利することよりむしろ参加したことであろう」であった。
それが、引用者であるクーベルタンの〝名言〟として後世に残った。第10回ロサンゼルス大会以降の、選手娯楽室にはクーベルタンの「言葉」として掲げられたという。
(日刊スポーツ I / 2020年1月)
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