子供たちよ。
これは譲り葉の木です。
この譲り葉は
新しい葉が出来ると
入り代つてふるい葉が落ちてしまふのです。
世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持つてゆかない。
みんなお前たちに譲つてゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを
一生懸命に造つてゐます。
今、お前たちは気が附かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のやうにうたひ、花のやうに笑つてゐる間に
気が附いてきます。
そしたら子供たちよ
もう一度譲り葉の木の下に立つて
譲り葉を見る時が来るでせう。 (河井酔茗「ゆずり葉」)
年が明けた。重苦しい春である。子らの、明るい声が聞きたい。この子らに何を残せるのか。愚かな大人たちよ。
【石井秀一】
(日刊スポーツ I / 2023年1月)
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