2025年9月21日(日)午前5時20分 放送
2025年9月23日(火)午後2時49分(再)
ナレーション:吉田一平(abnアナウンサー)
「戦争があったからきょうだいは亡くなり、自分は生まれた。ならば、戦争がこれから無いように自分に出来ることはないか」。満蒙開拓団員2世で、戦後、長野県軽井沢町で生まれた堀川正登さん(73)。かつて両親が暮らした旧満州大日向村の地図作りを続けている。
今春、元開拓団員や子孫とともに3度目となる現地訪問をした。幼少期を満州大日向村で過ごした市川渥夫さん(90)も同行し、その記憶を頼りに誰がどこで暮らしていたのか元団員の子や孫とともに見て回り1軒1軒最終確認を行って、帰国後に地図を完成させた。
国策として推し進められた「満蒙開拓」。長野県からは全国最多の3万3000人が海を渡った。中でも、昭和恐慌により困窮していた山間の農村「大日向」(現 長野県佐久穂町)は、昭和13年、村の存続をかけて大規模な開拓団を満州に送り出し、全国初の「分村移民」として、満蒙開拓のプロパガンダにも利用された。
しかし、敗戦によって、満州大日向村を追われた団員たちは、1年近い難民生活の末、半数以上が亡くなり、日本への引き揚げ後は、母村に留まることができず軽井沢町大日向に再入植し戦後開拓を行った。開拓団員として別々の伴侶と子らとともに旧満州に渡った堀川さんの両親。難民生活でそれぞれの家族を亡くし、軽井沢で再婚、正登さんが生まれた。
満州で一体何があったのか…。堀川正登さんは、戦争に翻弄された家族の歴史を、満州大日向村の地図づくりを通して追体験している。誰しも、自分のルーツを辿れば戦争の記憶を避けては通れない。戦後80年―薄れゆく家族と集落の物語を地図に刻み、次世代への道標にしたいと願う、満蒙開拓の記憶継承の取り組みを追った。