絵本はマウスでめくれるよ!!

菜の花は黄色いスーパーマン

りんごタウンにも春(はる)がきました。きょうはパパりんごの仕事(しごと)がお休(やす)みで家族(かぞく)そろって朝(あさ)ごはんを食(た)べています。
「きょうはとっても天気(てんき)がいいから、お花見(はなみ)でも行(い)こうか。」
パパりんごが言(い)いました。
「行(い)く、行(ゆ)く~。」
「そうね、お弁当(べんとう)を持(も)ってのっぺら山(やま)に行(い)きましょう。」
ママりんごも賛成(さんせい)して、さっそくお弁当作(べんとうづく)りにとりかかりました。
さあ、リュックに水筒(すいとう)とお弁当(べんとう)を入(い)れて出発(しゅっぱつ)です。

のっぺら山(やま)は、広(ひろ)い草原(そうげん)といくつか森(もり)をぬけたところにあります。
「あそこの川(かわ)にメダカがいるんだよ。」
りんご丸(まる)は前(まえ)におさるやパグリと来(き)たときに見(み)つけたのを思い出し(おもいだし)ました。
「ごみが増(ふ)えると空気(くうき)が汚(よご)れてしまってメダカが住(す)めなくなってしまうかもしれないよ。」
パパりんごが言(い)うと、りんご丸(まる)も
「メダカ、いなくなるとさみしいな。」
しばらくすると、おわんをひっくりかえしたようなのっぺら山(やま)が見(み)えてきました。

「わあ~、きれいね~。黄色(きいろ)いじゅうたんみたいよ。」
とママりんご。今(いま)の季節(きせつ)は、菜(な)の花(はな)が満開(まんかい)です。
「おなかすいたよ~。」
菜(な)の花(はな)畑(ばたけ)の真(ま)ん中(なか)に着(つ)くとさっそくお弁当(べんとう)を広(ひろ)げました。
「いっただきま~す。」
三人(さんにん)は、一面(いちめん)の菜(な)の花(はな)畑(ばたけ)とその向(む)こうに見(み)えるりんごタウンの景色(けしき)を眺(なが)めながら、おにぎりや卵(たまご)焼(や)きをほおばります。
「おいしいね~。」
「ママの作(つく)った卵焼(たまごや)きは絶品(ぜっぴん)だね。」
お弁当(べんとう)を食(た)べ終(お)わると、ママりんごは、菜(な)の花(はな)をつみ始(はじ)めました。
「ママ、何(なに)してるの?」
「菜の花(なのはな)をおひたしにすると、ちょっと苦(にが)いけどとってもおいしいのよ。」
「へえ~。菜(な)の花(はな)って食(た)べられるんだ。」

「食(た)べるだけじゃないよ、りんご丸(まる)。菜(な)の花(はな)はいろんな使(つか)い方(かた)ができるんだ。」
パパりんごはいいました。
「菜(な)の花(はな)の菜種(なたね)をしぼると、なたね油(あぶら)ができる。なたね油(あぶら)を料理(りょうり)に使(つか)ったあと、石(せっ)けんを作(つく)ったり、肥料(ひりょう)にもなるんだ。この油(あぶら)は空気(くうき)を汚(よご)さないから、ディーゼルエンジンのクルマの燃料(ねんりょう)にも使(つか)われているんだよ。」
「ふーん。菜(な)の花(はな)ってすごいね。」
「そうだよ。花(はな)はかわいいけど、黄色(きいろ)いスーパーマンだな。」
「へえ~、黄色(きいろ)いスーパーマンか~。」
りんご丸(まる)が、さっそく菜(な)の花(はな)畑(ばたけ)でスーパーマンのまねをしていると、何(なに)かにぶつかりました。あれっと思(おも)った瞬間(しゅんかん)、
「だれだ~。」
どこかで聞(き)いた声(こえ)です。そうです。らいぞう博士(はかせ)です。
「あれ、らいぞう博士(はかせ)、久(ひさ)しぶりだね。」
「またりんご丸(まる)か。いつもわしの昼寝(ひるね)のジャマをするな。」
「ごめんなさい。」
らいぞう博士(はかせ)は、菜(な)の花(はな)畑(ばたけ)がお気(き)に入(い)りのようです。

「この畑(はたけ)はしばらく何(なに)も作(つく)っていなかったのじゃ。それが少(すこ)し前(まえ)から菜(な)の花(はな)畑(ばたけ)になって、あたり一面(いちめん)黄色(きいろ)のじゅうたんじゃ。春(はる)になるとここに来(く)るのが楽(たの)しくてな。」
珍(めずら)しくうれしそうな顔(かお)つきで言(い)いました。
「そうじゃ、菜(な)の花(はな)から何(なに)ができるか知(し)っておるか。りんご丸(まる)。」
「うん、知(し)ってるよ。おひたしにもなるし、クルマの燃料(ねんりょう)にもなるんだよ。」
りんご丸(まる)は教(おし)えてもらったばかりのことを、胸(むね)をはって言(い)いました。
「おぉ、りんご丸(まる)、よく知(し)っておるな。ワシがいろいろ教(おし)えたからな。」
りんご丸(まる)は、『ちがうよ、パパに教(おし)えてもらったんだよ。』と言(い)おうと思(おも)ったけれど、らいぞう博士(はかせ)があんまりご機嫌(きげん)なので、やめておきました。

♪なのはなばたけ~に いりひうすれ~
みわたすやまのーは かぁすみふかし~
ちょっと音痴(おんち)ならいぞう博士(はかせ)の歌(うた)を聞(き)きながら、りんご丸(まる)たちはのっぺら山(やま)を後(あと)にしました。
出典:『朧月夜』
高野辰之作詞・岡野貞一作曲/文部省唱歌

作 こばやし 明子
絵 ながはり 朱実

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