新聞に乗らない内緒話

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コラム

「キョウイクとキョウヨウ」

「定年後の肝要は、キョウイクとキョウヨウ」と聞かされた。「教育と教養」と理解していたが、キョウイクは「今日行く(ところ)」、キョウヨウは「今日、用(があるか)」だと教えられた。
なるほど、定年後の、茫漠たる時間群は何か予定でも立てなければ持て余す。幸い、地元人材センターの紹介で独身寮の管理人職にありついた。週3回ほどの勤務で、一方月1回はこのコラム執筆のため古巣・日刊スポーツ新聞社に〝出社〟している。ボランティアで落語会の(入場券)モギリもこなし、まぁ生活のリズムが整った。
他日は、図書館に〝出勤〟している。サラリーマン時代なら記事作成のための資料蒐集が目的だったが、今はこれまで読み切れなかった小説、エッセイ、植物学、心理学など興味の赴くまま書棚に手を伸ばしている。無趣味を自認していたが、1日本まみれになっている自分に、趣味は読書であったかと気が付いた。とはいえ出勤、昇級、人間関係などとは無縁になり、生活の歳時記は惰性に押し流されてゆく。
それでもさすがに「正月」だけは格別である。新たな年を迎え、ささやかな決意を抱いてみる。

私はこうありたい――より勇敢で 大胆に/もう年なのだから いま少し賢く/出会う人々に もう少し優しく/敗北に対して もっと雄々しく
これが新年の私の願い 私の祈り/神よ 真の人間に なさしめたまえ
私はこうありたい――いま少し洗練され/もっと微笑み ぐちを少なく/立ち上がりにもがいている人々へ/より早く 手をさしのべたい
これが新年の私の祈り/神よ 真の人間に なさしめたまえ
私はこうありたい――いま少し公平に/より優れ より正確に/すぐ咎め立てや 非難することなく/あらゆる人を助け/人の欠点に むきにならない人
神よ 真の人間に なさしめたまえ
私はこうありたい――いま少し誠実に/願うだけでなく 行う人に/より広く より大きく 進んで人に与え/隣人に手を貸しつつ ともに生きる人
これが私の新年の願い 私の祈り/神よ 私を真の人間に なさしめたまえ 
(エドガー・A・ゲスト)

色彩に乏しい季節に福寿草の黄金色は貴重である。南天と寄せ植え、「難を転じ、福となす」と人は言った。不透明な時代。身近な、小さな幸せこそ、心の拠り所かもしれぬ。

生きてゐる ことを賀状が知らせて来

(読み人知らず)

(日刊スポーツ I / 2019年1月)

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