草田敏彦ブログ

真価が問われるレジリエンス

「フクシマ50」のひとりに会いました。

3.11当時、東電の幹部で福島第一原発の5,6号機ユニット所長だった吉澤厚文さんです。

(現在は原燃輸送株式会社社長)

飯田高校OBで東京での同窓会でお会いしました。

吉澤さんは事故の拡大を防ぐため、
「吉田調書」の吉田所長とともに現場で10カ月寝泊まりをしながら対応にあたりました。

イギリスのガーディアンからも取材を受け、
「日本では死ぬまで働くという契約を会社と交わすのか」とか
「日本にカミカゼはまだあるのか」、「家族のことは考えないのか」などと聞かれたそうです。

いま、東工大の非常勤講師でもあり教壇に立つ機会もあります。
講義で話したこともあるというテーマで講演されました。

テーマは「レジリエンス(弾性力)工学の観点から緊急時対応を考える」

根っからの文系人間の私はこのテーマだけで腰が引けてしまうのですが…

要するに、人を「エラーをおこす厄介なもの」として捉えるのではなく、
「有事の際にダメージを回復できる弾性力を持つ」ものとして
より積極的に活用する安全概念について…という内容です。

人は問題や逆境に直面した時、成功(回復)を得るために努力する能力(これをレジリエンスという)を有している。
それは頑強さとは違う観念で「弾力性」や「復元力」である。
臨機応変というと分かりやすいかもしれない。

全電源喪失という事態に直面して、それまでに準備していた危機管理マニュアルが全く用をなさなかった。
臨機応変な対応が求められた。

しかもそれは、死を意識せざるを得ないような極限状態の中だった。

事故対応の原動力(のひとつ)は使命感。

「俺たちがやらなければ誰がやるんだ」

ただ、使命感は勝手に育つものでも、日々の労働の副産物でもない。
日常的に直接意識して育む必要がある。
そしてそれは、罰する文化のもとでは育たない。

比較にもならないが、我が身に置き換えて考えました。

使命感、企業風土、生業(なりわい)ということ…

壇上から降りた吉澤さんは
「どこの会社もどんな仕事も同じだよ」と話してくれました。

良い時間を過ごしました。